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VOL.2 ウィーンの宅配事情

日本でも、宅配便のあり方が様々な議論を呼んでいるようですが、今月は私がウィーンに来て最初に驚いた宅配便のシステムについて書きたいと思います。

 

日本でネット通販愛用者だった私は、ウィーンに来てすぐの頃、早速Amazonを利用しました。数日後、不在票がポストに入っていたので、日本と同じ感覚で、再配達の連絡をしようと思い、ドイツ語がよくわからないまま不在票をじっくり見たのですが、何度見返しても品物の受取場所らしき記載があるだけでした。どうやら再配達はなく、記載された指定場所に取りに行かなければならないようだと知った時の衝撃といったら。今でもありありと思い出します。その後、少しドイツ語がわかるようになってから、不在票をあらためて見たところ、なんと、再配達日の記載欄を見つけたのですが、この日に再配達に行きますよ、と宅配業者側が書き込む欄であって、こちらから再配達の日時指定をできるわけではなさそうでしたし、我が家で受け取る不在票はいつもこの欄は空欄になっているので、どういう条件で再配達がされるのかは未だに謎のままです。

 

このように、ウィーンでは、配達時に不在だった場合には、不在票に記載された荷物保管所に自ら受け取りに行くことになります。郵便局の場合は最寄りの郵便局か郵便局の無人荷物保管ロッカー、民間の宅配業者の場合は宅配業者と提携している近隣の個人商店などで荷物が保管されています。また、隣人が預かるということもよくあります(私も何度か預かったことがあります)。何度か荷物を取りに行ったことのある近くの電気屋さんは、営業時間が月曜から金曜までの9時から18時まででした。働いている人はどうするのだろうと思いますが、スーパーなどで宅配業者の荷物保管ロッカーを見かけるので、きっと、日中自宅にいない人は自宅配送ではなく、営業所や荷物保管ロッカーでの受取を選択するのでしょう。

 

最初はなんて不便なのだろうと思っていましたが、ウィーンに住んでほぼ2年、再配達がないことにもすっかり慣れました。日本では配送の日付だけでなく時間まで指定でき、週末や早朝から夜間まで配達してくれるわけですから、とても恵まれています。時間指定もできず、平日の営業時間内しか配達のないオーストリアよりずっと再配達の必要性は少ないわけで、再配達は有料にしたらよいのではないかと思うくらいです。再配達が(基本的に)ないこともそうですが、日曜日は全てのお店が閉まってしまうなど、こちらでは労働者の権利がとてもよく守られていることに感心します。日本人は本当に真面目によく働くので、その犠牲のもとに過剰な便利さが追求されているように感じます。多少不便でも慣れるものですし、働く人の環境を守るシステムの構築が必要だと思います。

 

余談ですが、配達員は忙しいなどの理由で、呼び鈴も押さずに不在票をポンとポストに入れておくだけのことが、この国ではよくあるそうです(家主談)。一度その日に日本からのEMSが届きそうだということでずっと家で待っていたのですが、結局その日誰も配達に来なかったのに、夜になって郵便受けを見ると不在票が入っていたということがありました。掃除機でもかけていて呼び鈴に気づかなかったのか、などと自責の念にとらわれていたのですが、その話を聞いて、実は配達員が呼び鈴を押さなかっただけだったのではないかと思っています。また、不在票に記載されている荷物預かり所が間違っているケースもありました。不在票に表示されている住所まで30分かけて出かけたところ、最寄りの郵便局に保管されているわよと言われたときの徒労感…。それも一度でなく2度も。私の友人は、日本からの荷物がなんの連絡もないままアパートの玄関に置き去りにされていて、しばらく気づかなかったことがあったそうです。オーストリア人の家主によると、オーストリア人は結構いい加減で、ドイツ人とイタリア人の中間のような気質なの、ということでしたが、そうなのかもしれません。

 

24時間無人荷物保管ロッカー

 

郵便局の24時間無人荷物保管ロッカーです。

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